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2011年1月27日

レジスタンスの魂今こそ!


 フランスの田舎の広場に行くと、
 何やら意味深長な感じで石のモニュメントがあり、
 剣を握った【手】が、天を突き刺すように立っている。
 そこには、いつも鮮やかな赤い花が捧げれ、
 そばの石板には、名前がずら~り。
 これは、第二次大戦で亡くなったレジスタンス活動家なのだ。

 もう20年近く前、ゴシック建築で有名なシャルトルの街で、
 私は初めてこの盛大なモニュメントに出くわした。
 その時、私はシャルトル大聖堂の大司教様宅にランチに招かれていた。
 やたらと赤い色が目立ったので、多分戦没者なんだと理解し、
 大司教様の家に急いだ。
 現地のお年寄りも交え、楽しくおいしい家庭料理のランチを終える頃、
 私は、そのお年寄りの何人かのジャケットの襟に<赤い二本>の線がくっきり
 刺繍されているのに気付いた。
 ブリッジクラブかなんかのジャケットか?と、気軽にそれなんですかと
 尋ねると。。。。

 彼らは急に威儀をただし、
  「これは、元レジスタンスのしるしだよ」と言った。
  「我々は、一介の市民だ。しかし自由のために命を懸けて
   戦ったことを誇りとしている。
   今でも、自由が侵されるのであれば、すぐに戦う準備がある事を
   この赤い線に誓っているんだよ。」

 ここで初めて、あの広場のモニュメントが、
 大戦時にレジスタンスで命を落としたシャルトル出身者の慰霊塔と知った。
 戦没者とは一線を画す待遇なのだ。
  「人が安心して家族と愛をはぐくめる生活ができること、その自由を
   奪うものとは断固戦う!人の幸せを奪うものは許さない!」
 この姿勢が温厚な"おじいちゃん"からあふれていた。
 政府とか、誰か、ではなく、自分で勝ちとろうという気概にあふれていた。

 フランス人はよくこういう。
 「自由は、命がけで民衆が手に入れるもの。上から落ちてはこない。」
 原爆が投下と引き換えに、アメリカが「はい、どうぞ!」とくれた
 日本の"自由"とはだいぶわけが違う。
 さすが、世界初、【自由】【人権】を手にした国である。

 フランスで今、93歳のおじいさんの本が売れている。
   『憤慨せよ!』

 このおじいさん、元レジスタンスである。
 今どきの若者が、やたらとものわかりがよく、世に流されてゆくのが
 どうやらお気に召さなかったようだ。

  『レジスタンスの原動力は、世の理不尽と悪に対する怒りだ!
   長いものにまかれるのでなく、悪は悪、理不尽は理不尽と、
   立ち向かい、それをただすのが若者の役目だ!!』

 ・・・的な、若者を一喝した内容である。
 そこには、気骨のあるレジスタンスの言葉があふれ、
 それが世の若者に受けたのである。

 この話を聞いて、私はうらやましいと思った。
 93歳である!
 ヨーロッパに行くと、90過ぎてもやたらと元気で現役バリバリで
 周囲に喝を入れているお年寄りに出会う。
 若者はそれなりに、そんなお年寄りを尊敬している。
 お年寄りの一家言には、それなりの深みがあり、
 後輩はそれを伝承しなくてはという雰囲気が伝わってくる。

 では日本ではどうか?
 こんなお年寄りは、圧倒的に少ない。
 みな、介護で家族の足手まといになることを恐れ、年金暮らしを嘆き、
 何かみな後ろ向きのような気がする。
 みなこの年まで生きてきた。
 誰かの言葉ではないが、生きてるだけで丸儲け!である。
 どんな人にも生きてきた中で培ったものがあるはずで、
 それを次に伝えようという気持ちが欠けているような気がするし、
 後進達はそれを生かそうという空気もない。
 いわゆる「年寄り扱い」である。

 なんという文化のていたらく!!
 年を取ることが、マイナスイメージの国に、未来はない!!
 年を取っているからわかること、知っていること、見えるものがある。
 それを大事にできなければ、同じ間違いを常に繰り返すだけの、
 お子ちゃま文化しか育たないではないか!
 
 戦前の日本はそうではなかったはずである。
 なんでも新しいもの、使い捨てできるものが、今風でかっこよく、
 便利であることが幸せだと、新興国のアメリカに教えてもらった戦後、
 確かにそのおかげで日本は驚異的に近代化したかもしれないが、
 もうそろそろ、大事なことを思い出さなくてはいけない。

 【温故知新】
 
 日本のお年寄りは、誇りを持ってほしい。
 私たちも、楽しい老後・・・などと、お年寄りを
 ただ、いたわっていてはいけないのだ。
 彼らにはもっと英知を使って、後進に伝授できるものが
 たくさんあるはずである。
 年金で遊ばせてはいけない!
 今こそ、この日本のていたらくに喝を入れられるのは、
 戦争を超え、高度成長を超えて来たおとしよりなのだから。
 
 「人は死ぬまで、誰かの役に立つ」
 これは西欧人が考える生きる理由である。
 この世で「役立たず」になったら、天に召される。
 先日、脳科学者の沢口先生が、「退屈は命取り」とおっしゃった。
 「何もすることがなくなると、人は死ぬようになっている」と。
 元気で死ぬまで長生き・・・のコツは、
 年金でのんびり遊ぶのではなく、
 後輩のためにせっせと喝を入れ働くことなのだろう。

 シャルトルのお年寄りは、とても温厚でいいおじいちゃんだった。
 しかし、レジスタンスの魂は、その瞳の奥できらりと光っていた。


 

 
 
 
 

 

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